画は 鈴木 春信(すずき はるのぶ)
享保10年(1725年)? ~ 明和7年(1770年) 作
「菖蒲園」です。
☆晴れ。
話題の記事ですな、ちっと長いが、
◆http://tanakanews.com/150519saudi.htm
2015年5月19日 田中 宇(さかい)
◎米サウジ戦争としての原油安の長期化
より抜粋、
5月13日、先進諸国でつくる「国際エネルギー機関(IEA)」が、
サウジアラビアがOPEC(石油輸出国機構)を率いて大増産し、
米国のシェール石油(タイト石油)の産業を潰そうとしていることについて、
この戦いは始まったばかりであり、最近起きている原油相場の上昇は
一時的なものにすぎない との予測を月次報告書(Oil Market Report)で発表した。
昨年からの原油安が、
サウジによる米シェール潰しの策なのだとIEAが認知した点が目新しい。
昨秋来のサウジなどによる大増産で、原油相場は今年初めにかけて、
昨夏の高値の半値の1バレル45ドル前後まで落ち、
米シェール産業は 減益や油井の閉鎖、従業員解雇などの窮地に立たされた。
しかし原油相場はその後、シェール産業が利益を出せる1バレル60ドル台まで
再上昇し、同業界は一息ついている。
シェールの石油とガスは、化学薬品を含んだ水を、地下の地層に水平に注入し、
その圧力で採掘するが、注入物に砂を混ぜることで増産を可能にするなどの
新技術が開発され、以前よりシェール採掘の損益分岐点となる原油価格が
下がっているという。
シェール産業は延命する力をつけている
(後述するように、延命のカギは技術力よりも金融力であり、
技術力を強調するNYタイムスの記事は、まさにNYタイムスがやりそうな
マスゴミ的な目くらましだと私は考えている)。
サウジは、米シェール産業を潰そうとする姿勢を続けている。
サウジは中国などアジア向けに さかんに安値で原油を輸出しており、
4月の月間産油量が過去最大となった。
サウジは、先月からのイエメン侵攻で軍事費が急増し、
増産しているのに 原油安なので 石油収入で出費増をまかないきれず、
外貨準備を取り崩している。
サウジは、かなり困窮しながらも 根強く原油安戦略を続けている。
シェール潰しの努力を是が非でも続けねばならないとの意志が感じられる。
OPECは、5月12日に発表した報告書の中で、
米シェール産業の拡大を阻むサウジ主導のOPECの策は成功していると
自画自賛している。
OPECは、2025年の原油相場は1バレル40ドルかもしれず、
1バレル100ドルに戻ることは、少なくともあと10年間起こらない
とも言っている。石油先物相場で儲けている米金融界の人々も、
今の原油上昇は短命に終わると予測している。
原油相場は昨年7月に1バレル115ドルの高値をつけた後、
9月から下落傾向が顕著になった。
原油安は当初、世界的な景気悪化の影響とされたが、
原油安が続いてもサウジが減産せず、むしろ増産しているので、
その理由が世界的に勘ぐられた。
サウジが米国から頼まれ、原油産出コストが高いイランやロシアといった
米国の敵を困らせるために増産し、原油安に導いているといった見方が、
当時から最近まで根強く報じられてきた。
11月末のOPECの会議で、サウジのナイミ石油相が、
米国のシェール石油の隆盛と戦わねばならない、
と提案して多数の賛同を受け、
増産して原油安に拍車をかけることがOPECの正式な戦略になった。
この戦略の目的は、サウジのナイミが語ったとおり、
米国内で石油を増産し、シェール石油採掘の技術を輸出して
世界的に非OPECの産油量を増やそうと画策する
米シェール産業を潰すことだった。
しかし、年末年始にロシアで(米投機筋によって)金融危機が起こされた
こともあり、OPEC会議後も、内外のマスコミや「専門家」の中には
「米国とサウジが結託して原油を増産し、イランやロシアを潰そうとしている」
などと「解説」のふりをしたプロパガンダをまき散らす者がけっこういた。
最近、サウジの匿名の高官がFTに対し
「ここ数カ月間、原油相場を引き下げたせいで、
米シェール産業やブラジルの海底油田など、高コストの産油事業に対し、
投資家が資金を出さなくなっている。
(サウジの原油安誘導の)戦略は成功している」と語っている。
米シェール産業と並列されている「ブラジルの海底油田」は、
米国との正面衝突を避けるための外交的配慮から言及されたものだろう
(サウジが、ブラジルの海底油田ごときを標的に、
何カ月も無理をして大増産するとは考えにくい)。
サウジが米シェール産業を敵視していることは事実と考えるべきだ。
(私がよく参考にする金融分析サイトのゼロヘッジは、
サウジが米国の傀儡だという見方に固執し、サウジの原油安戦略の目的が、
米シェール産業を潰すためだというFTの記事について、
目くらましが目的のウソだと書いている。
サウジよりもはるかに確固たる対米従属の国家戦略を持つ日本に住んでいる私は、
サウジの対米戦略はゆれており、
サウジが米シェール産業から受ける脅威をいやがって
原油安戦略をやることが十分にあり得ると考えている。
ゼロヘッジは、日銀のQEの危険性を早くから指摘してきたが、その一方で、
日本が官僚独裁維持のため徹頭徹尾の対米従属だということに気づいていない)
昨年末の金融危機のさなか、ロシアのプーチン大統領は、
ロシアの経済難は最長でも2年だとの予測を国民に向かって発した。
原油安は最長で2年続くという意味にとれる。
サウジが米シェール産業に原油安の戦いを挑んで8か月ほど過ぎたが、
戦いが2年間だとすると、まだ1年以上続くことになる。
先進諸国は、今回のIEA報告書を通じ、サウジが米シェール産業を潰そうとしている
ことが今の原油安の背景だと、正式に認めた。
なぜサウジはシェール産業を目の敵にするのか。
よく言われるのは「サウジが支配している
OPECの世界の産油市場におけるシェアが低下しているので、
シェア低下の最大要因であるシェール産業の油井が
米国内外に急増する前に、シェール革命を潰さねばならないから」という解説だ。
たしかに、世界におけるOPECのシェアは、最盛時の50%超から、
今の32%へと落ちている。
しかし、米国がサウジの友好国であるなら、サウジ(OPEC)と米国勢が談合し、
共存共栄が可能な原油相場の水準を決め、それを維持していくことができたはずだ。
談合でなく原油安の戦争になったのは、
サウジが米国勢との談合を不可能と考えざるを得ない状況があったからだろう。
米国では、シェール革命が喧伝され始めた2011年以来
「シェール石油ガスの採掘を、米国だけでなく同盟諸国に広げることにより、
米国と同盟諸国は、サウジなど、テロリストだらけのイスラム世界から
石油ガスを輸入する必要がなくなり、サウジやイスラム世界と縁を切り、
サウジを政権崩壊や弱体化に持ち込んで、テロ戦争を最終的に解決できる」
といったような言説が、右派からたくさん出ている。
こうした言説が、単なる右派の空想でなく、
実際に米政府が試みてきた戦略であるとしたら、どうだろう。
サウジは以前から、米国の右派(軍産イスラエル複合体、ネオコン)から
濡れ衣的に敵視され続けてきた。
01年の911テロ事件では、19人の「実行犯」の大半がサウジ人とされたが、
そのうちの何人かは本人(氏名と生年月日が同一の人)が
当日サウジ国内にいたことが判明し、米当局も「人違い」であることを認めた
(それなのに米政府は引き続き同じ19人を実行犯として名指し続けている)。
サウジに、オサマ・ビンラディンの支持者や「アフガン帰り」など
イスラム過激派が多かったのは事実だが、
911が「サウジの犯行」であるというのは無根拠な濡れ衣だ。
米国の右派は、濡れ衣に基づいて「サウジを政権転覆すべき」
「サウジを数個の小国家に解体すべき」などと主張し続けている。
軍人を「クーデターを起こしかねない」と考えて信用しないサウジ王室は、
安全保障を米国に依存しており、
米国の安保戦略を握る右派に濡れ衣をかけられていじめられても受容し、
たえしのんできた。
しかし、サウジが米シェール産業を潰そうとしていることは、
シェールをめぐる件でサウジが米国からのいじめを容認していると
本当にサウジ王政が倒されかねないという危機感を、
サウジ側が抱いたことを意味している。
サウジは、サウド王家による独裁国だ。
国名が「サウド家のアラビア」であることが象徴するように、
サウド家の政権維持が絶対の国是だ。
サウド家の権力や権威は、石油収入が王室に入り、
そのカネを王室が国民に分配することで維持されている。
サウド家は王政維持のため、その源泉である国際石油価格を
有利に推移させる必要があり、その目的でOPECがある。
米国のシェール革命が進展し、米国と同盟諸国が、
サウジやOPECの石油を必要としなくなると、
サウジにおける王室の権威の低下を引き起こし、
米右派が歓喜するサウド家の転覆につながりかねない。
サウド家は、全力でそれを阻止する必要がある。
春信、二枚目、
「蓮採り」です。
シェールの石油ガス田の多くは、数年で枯渇する。
シェール産業は、常に油井を掘り続けねばならず、巨額の投資を必要とする。
低金利の金融環境と、原油価格の高止まりの 両方の永続を必須とし、
かなり基盤が脆弱だ。
シエール革命は金融バブルの申し子だ。
サウド家はおそらくこの点に着目し、サウジがOPECを率いて増産し
原油相場の超安値を数カ月から2年ほど続ければシェール産業は赤字になり、
投資がこなくなって潰れ、
サウド家の脅威になるシェール革命も終わると考えたのだろう。
これが、昨秋来のサウジ主導の原油安の本質だと私は考えている。
米サウジ間では、サウジによる米シェール潰しに対抗するかのように、
米側がサウジに脅威を与えている。
その一つは、米オバマ政権が中東政治におけるサウジのライバルである
イランを制裁解除によって強化しようとする隠然策をやっていることだ。
米軍顧問団がイエメンから無意味に撤退し、
残置した武器が親イランのフーシ派にわたるように画策し、
サウジがイエメンに侵攻せざるを得ない状況を作ったことも、
米国がサウジに脅威を与えている。
サウジは表向き親米の外交姿勢を保っているが、おそらくサウド家の実際の戦略は、
もう米国を信用しないし頼らないようにする方向だろう。
「サウジは親米の国です」と断言している中東専門家たちは、
政府の宣伝を請け負っているだけだろうが、
本心からそう考えているとしたら間抜けだ。
サウジ主導の原油安が始まった当初、数カ月後の今年の夏ごろには、
ジャンク債を中心としたシェール産業の資金調達が困難になり、
シェールの新規油井の採掘が急減するとか、
シェール産業発行のジャンク債が債務不履行になり、
金融危機の引き金を引くという予測が米国にあった。
今でも「米国のシェール採掘(フラッキング)会社は昨年61社あったが、
今は41社に減った。今年末までに20社になるだろう」との予測がある。
今夏に全米の原油備蓄タンクがぜんぶ一杯になり、それ以降、
石油がたたき売りされて相場が再急落する、との予測もある。
しかし、冒頭で紹介したIEAの報告書が示すところは、
米シェール産業の底力が予想より強いということだ。
それは技術力向上のおかげだと報じられていることもすでに書いたが、
シェール産業の底力は、技術力よりも金融力だろう
(シェール革命はもともと金融界の創案であり、
技術力を喧伝するのは最初から目くらましの機能だった)。
米金融界が、米国の債券金融再崩壊を防ぐため、
シェール産業のジャンク債が破綻せず新たな起債で延命できるよう
取りはからっているのが、シェールの最大の底力だろう。
原油安でシェールのジャンク債が破綻し、
それが米金融界全体の再崩壊に拡大する可能性は当面、低そうだ。
しかし、シェール業界は今後も薄利もしくは赤字気味の状態のままだ。
その一方で、QEやゼロ金利など長期化した不健全な金融緩和策が
そろそろ縮小されていくとの見通しが 意図せぬ債券金利の急騰を引き起こす
「金融緩和策縮小時の市場の癇癪」「テーパー・タントラム(taper tantrum)」
の発生が懸念されている。
最近、グリーンスパン元連銀議長が「テーパー・タントラムが起こりかねない」
と発言し、関係者を驚かせている。
シェール債券が米金融の再危機を起こすのでなく、
他の要因から起きた再危機がシェール債券に波及し、金融からシェール産業が崩れ、
サウジの勝利になる可能性はある。
先日、米ジャーナリストのセイモア・ハーシュが
「2011年の米軍特殊部隊によるパキスタンでのオサマ・ビンラディン殺害は、
米国がパキスタン政府に何も言わず挙行し、
パキスタン政府はそこにビンラディンが住んでいることすら知らなかった
ことになっているが、それはウソで、
実はビンラディンは、母国のサウジ王政から依頼されたパキスタン当局によって
06年から幽閉されていた。
パキスタンの諜報員がそれを米当局に漏らし、殺害劇になった。
サウジは、ビンラディンが米国に捕まって
サウジ王政に支援されていたことを自白することを恐れ、幽閉していた」
という趣旨の暴露記事を書き、話題になった。
米政府は当時、ビンラディンを殺害したと発表したが、
その証拠となるビンラディンの遺体の写真などを全く発表していない。
米政府が襲撃した先に本当にビンラディンがいたかどうか怪しい。
証拠を発表していないことから考えて、米軍はあの時ビンラディンを殺していない。
ハーシュの記事は、真実の暴露でなく、
新たに米当局筋が漏洩したプロパガンダを記事にしただけでないか。
私だけでなく、米元国務次官補のポール・クレイグロバーツも、そのように疑っている。
ハーシュの記事は、サウジがパキスタンに命じ、
米国に隠れてビンラディンを幽閉させていたことを書いている。
これはサウジとパキスタンにとって、米国との関係を悪化させる不名誉な話だ。
米当局がハーシュに情報を漏洩して記事を書かせたのは、
サウジとパキスタンに新たな意地悪をして、
両国を米国からますます遠ざけるためでないかと私は勘ぐっている。
パキスタンには最近、中国の習近平主席が訪れ、
巨額のインフラ整備事業を約束している。
サウジを反米の方に、パキスタンを親中国の方に押しやる、
米当局の隠れ多極主義の策略が、ハーシュの記事の騒動の裏に透けて見える。
↑
ユダ米もサウジ王室も潰れればよいのさ、ともに地球の癌細胞です。
傀儡師は偽ユダヤ=シオニストで、これが元兇です。
中東、アフリカを撹乱させておるのは西欧の背後におるシオニストどもです。
春信、三枚目、
「蹴鞠」です。
大風呂敷かw
◆http://melma.com/backnumber_45206_6210806/
宮崎正弘の国際ニュース・早読み(今度は李克強首相が大風呂敷)
発行日:5/22
今度は李克強首相がブラジルで大風呂敷
産業団地ごと輸出し、相手国の経済発展に協力する、って
****************************************
すっかり経済プログラム策定の主導権を習近平に奪われた観があった
李克強首相 率いる国務院。
中国でそもそも経済方面を所管するのは国務院である。
反撃するかのように李克強首相は
別のファンドによる外国投資プログラムを訪問先のブラジルで派手にぶち挙げた。
ソブレンファンドと呼ばれる「中国国富ファンド」(CIC)子会社を通じて300億ドル、
合計700億ドルで「工業団地まるごと輸出」を行うという壮大な風呂敷だ。
シルクロード財団は400億ドルだから、それよりも金額も多く、
また国務院所所管の「CICファンド」の子会社を設立するという手段も、新手である。
習近平の対抗姿勢が見え見えである。
中味を見ると鉄鋼、造船、化学、機械、通信、繊維産業ならびに
宇宙・航空産業の「工業団地」を相手国に設営し、
経済発展の向上に協力するというもの、
名付けて「MADE IN CHINA 2025」。
プロジェクト名が象徴するように十年後の2025年を目標に、
ブラジル、メキシコなどに 中国企業団地を移設する腹づもりらしい。
AIIB、BRICS、そしてシルクロード基金の
いずれもが 中国の在庫一掃と中国企業の雇用確保を狙ったものであり、
それに輪をかけて 今度は
中国企業をプロジェクトごと外国へ輸出しようという、とてつもない計画である。
大生風呂敷をひろげるのは得意中の得意の中国だが、
たたみ方を知らないという特性もある。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♪
(読者の声1)
貴誌4534号(5月10日付け)によれば、英国総選挙に11名の華人が立候補していたとか。
結果は保守党が単独過半数となりキャメロン政権続投ですが、
華人候補者のなかで当選した人は居たのでしょうか?
(JJセブン)
(宮崎正弘のコメント)
ひとり、当選しております。移民二世で
広東省から香港へのがれた両親が苦労して英国へ移住し、本人は英国生まれ。
早熟で16歳で保守党活動に目覚め、ケンブリッジを卒業後、
政治に身を投じた アラン・マク(中国名=?倫麦)。弱冠31歳。
「小売商の息子」として庶民の人気をあつめたあたり、
やはり「小売商の娘」だったサッチャーと境遇が似ているかも。
英国政界始まって以来の華人政治家誕生で、評判になっていますね。
他方、日本では先の統一地方選、
新宿区議に立候補したタレントの「李小牧」は大差で落選でした。
「歌舞伎町の案内人」とかで、マスコミの片隅に登場し、
北京の代理人のようなことを喋り、二月に帰化したばかりで、
はやくも四月に立候補した。
歌舞伎町の華人数万と言われますから、当然、当選を見込んでいたのでしょうが、
世間はそれほど甘くはなかった。
甘かったのは日本のマスコミで
「開票速報の会場にはNHK,日本テレビ、フジテレビ、NEWSWEEKなど
大手マスコミも詰めかけていた」(陽光導報、5月1日号)とか。
新宿区議は定員38名に対して52名が立候補、
李小牧の得票は1018票で、最下位当選者に422票もの大差がついていました。
惨敗といって良いでしょう。
↑
帰化、即、被選挙権も得られる、という現行制度、如何か? と思う。
選挙権は行使できるが、被選挙権は孫(3世)から、が至当ではないのか?
日本で教育を受け社会に適応し、貢献できる、となるのには三代はかかるでしょうw
「特亜系」は特に公職を蓄財の手段と見做し、公私混同がデホルトですから。
大阪とか「特亜系」が多いところは、すでにいろいろ・・・
でしょ。
享保10年(1725年)? ~ 明和7年(1770年) 作
「菖蒲園」です。
☆晴れ。
話題の記事ですな、ちっと長いが、
◆http://tanakanews.com/150519saudi.htm
2015年5月19日 田中 宇(さかい)
◎米サウジ戦争としての原油安の長期化
より抜粋、
5月13日、先進諸国でつくる「国際エネルギー機関(IEA)」が、
サウジアラビアがOPEC(石油輸出国機構)を率いて大増産し、
米国のシェール石油(タイト石油)の産業を潰そうとしていることについて、
この戦いは始まったばかりであり、最近起きている原油相場の上昇は
一時的なものにすぎない との予測を月次報告書(Oil Market Report)で発表した。
昨年からの原油安が、
サウジによる米シェール潰しの策なのだとIEAが認知した点が目新しい。
昨秋来のサウジなどによる大増産で、原油相場は今年初めにかけて、
昨夏の高値の半値の1バレル45ドル前後まで落ち、
米シェール産業は 減益や油井の閉鎖、従業員解雇などの窮地に立たされた。
しかし原油相場はその後、シェール産業が利益を出せる1バレル60ドル台まで
再上昇し、同業界は一息ついている。
シェールの石油とガスは、化学薬品を含んだ水を、地下の地層に水平に注入し、
その圧力で採掘するが、注入物に砂を混ぜることで増産を可能にするなどの
新技術が開発され、以前よりシェール採掘の損益分岐点となる原油価格が
下がっているという。
シェール産業は延命する力をつけている
(後述するように、延命のカギは技術力よりも金融力であり、
技術力を強調するNYタイムスの記事は、まさにNYタイムスがやりそうな
マスゴミ的な目くらましだと私は考えている)。
サウジは、米シェール産業を潰そうとする姿勢を続けている。
サウジは中国などアジア向けに さかんに安値で原油を輸出しており、
4月の月間産油量が過去最大となった。
サウジは、先月からのイエメン侵攻で軍事費が急増し、
増産しているのに 原油安なので 石油収入で出費増をまかないきれず、
外貨準備を取り崩している。
サウジは、かなり困窮しながらも 根強く原油安戦略を続けている。
シェール潰しの努力を是が非でも続けねばならないとの意志が感じられる。
OPECは、5月12日に発表した報告書の中で、
米シェール産業の拡大を阻むサウジ主導のOPECの策は成功していると
自画自賛している。
OPECは、2025年の原油相場は1バレル40ドルかもしれず、
1バレル100ドルに戻ることは、少なくともあと10年間起こらない
とも言っている。石油先物相場で儲けている米金融界の人々も、
今の原油上昇は短命に終わると予測している。
原油相場は昨年7月に1バレル115ドルの高値をつけた後、
9月から下落傾向が顕著になった。
原油安は当初、世界的な景気悪化の影響とされたが、
原油安が続いてもサウジが減産せず、むしろ増産しているので、
その理由が世界的に勘ぐられた。
サウジが米国から頼まれ、原油産出コストが高いイランやロシアといった
米国の敵を困らせるために増産し、原油安に導いているといった見方が、
当時から最近まで根強く報じられてきた。
11月末のOPECの会議で、サウジのナイミ石油相が、
米国のシェール石油の隆盛と戦わねばならない、
と提案して多数の賛同を受け、
増産して原油安に拍車をかけることがOPECの正式な戦略になった。
この戦略の目的は、サウジのナイミが語ったとおり、
米国内で石油を増産し、シェール石油採掘の技術を輸出して
世界的に非OPECの産油量を増やそうと画策する
米シェール産業を潰すことだった。
しかし、年末年始にロシアで(米投機筋によって)金融危機が起こされた
こともあり、OPEC会議後も、内外のマスコミや「専門家」の中には
「米国とサウジが結託して原油を増産し、イランやロシアを潰そうとしている」
などと「解説」のふりをしたプロパガンダをまき散らす者がけっこういた。
最近、サウジの匿名の高官がFTに対し
「ここ数カ月間、原油相場を引き下げたせいで、
米シェール産業やブラジルの海底油田など、高コストの産油事業に対し、
投資家が資金を出さなくなっている。
(サウジの原油安誘導の)戦略は成功している」と語っている。
米シェール産業と並列されている「ブラジルの海底油田」は、
米国との正面衝突を避けるための外交的配慮から言及されたものだろう
(サウジが、ブラジルの海底油田ごときを標的に、
何カ月も無理をして大増産するとは考えにくい)。
サウジが米シェール産業を敵視していることは事実と考えるべきだ。
(私がよく参考にする金融分析サイトのゼロヘッジは、
サウジが米国の傀儡だという見方に固執し、サウジの原油安戦略の目的が、
米シェール産業を潰すためだというFTの記事について、
目くらましが目的のウソだと書いている。
サウジよりもはるかに確固たる対米従属の国家戦略を持つ日本に住んでいる私は、
サウジの対米戦略はゆれており、
サウジが米シェール産業から受ける脅威をいやがって
原油安戦略をやることが十分にあり得ると考えている。
ゼロヘッジは、日銀のQEの危険性を早くから指摘してきたが、その一方で、
日本が官僚独裁維持のため徹頭徹尾の対米従属だということに気づいていない)
昨年末の金融危機のさなか、ロシアのプーチン大統領は、
ロシアの経済難は最長でも2年だとの予測を国民に向かって発した。
原油安は最長で2年続くという意味にとれる。
サウジが米シェール産業に原油安の戦いを挑んで8か月ほど過ぎたが、
戦いが2年間だとすると、まだ1年以上続くことになる。
先進諸国は、今回のIEA報告書を通じ、サウジが米シェール産業を潰そうとしている
ことが今の原油安の背景だと、正式に認めた。
なぜサウジはシェール産業を目の敵にするのか。
よく言われるのは「サウジが支配している
OPECの世界の産油市場におけるシェアが低下しているので、
シェア低下の最大要因であるシェール産業の油井が
米国内外に急増する前に、シェール革命を潰さねばならないから」という解説だ。
たしかに、世界におけるOPECのシェアは、最盛時の50%超から、
今の32%へと落ちている。
しかし、米国がサウジの友好国であるなら、サウジ(OPEC)と米国勢が談合し、
共存共栄が可能な原油相場の水準を決め、それを維持していくことができたはずだ。
談合でなく原油安の戦争になったのは、
サウジが米国勢との談合を不可能と考えざるを得ない状況があったからだろう。
米国では、シェール革命が喧伝され始めた2011年以来
「シェール石油ガスの採掘を、米国だけでなく同盟諸国に広げることにより、
米国と同盟諸国は、サウジなど、テロリストだらけのイスラム世界から
石油ガスを輸入する必要がなくなり、サウジやイスラム世界と縁を切り、
サウジを政権崩壊や弱体化に持ち込んで、テロ戦争を最終的に解決できる」
といったような言説が、右派からたくさん出ている。
こうした言説が、単なる右派の空想でなく、
実際に米政府が試みてきた戦略であるとしたら、どうだろう。
サウジは以前から、米国の右派(軍産イスラエル複合体、ネオコン)から
濡れ衣的に敵視され続けてきた。
01年の911テロ事件では、19人の「実行犯」の大半がサウジ人とされたが、
そのうちの何人かは本人(氏名と生年月日が同一の人)が
当日サウジ国内にいたことが判明し、米当局も「人違い」であることを認めた
(それなのに米政府は引き続き同じ19人を実行犯として名指し続けている)。
サウジに、オサマ・ビンラディンの支持者や「アフガン帰り」など
イスラム過激派が多かったのは事実だが、
911が「サウジの犯行」であるというのは無根拠な濡れ衣だ。
米国の右派は、濡れ衣に基づいて「サウジを政権転覆すべき」
「サウジを数個の小国家に解体すべき」などと主張し続けている。
軍人を「クーデターを起こしかねない」と考えて信用しないサウジ王室は、
安全保障を米国に依存しており、
米国の安保戦略を握る右派に濡れ衣をかけられていじめられても受容し、
たえしのんできた。
しかし、サウジが米シェール産業を潰そうとしていることは、
シェールをめぐる件でサウジが米国からのいじめを容認していると
本当にサウジ王政が倒されかねないという危機感を、
サウジ側が抱いたことを意味している。
サウジは、サウド王家による独裁国だ。
国名が「サウド家のアラビア」であることが象徴するように、
サウド家の政権維持が絶対の国是だ。
サウド家の権力や権威は、石油収入が王室に入り、
そのカネを王室が国民に分配することで維持されている。
サウド家は王政維持のため、その源泉である国際石油価格を
有利に推移させる必要があり、その目的でOPECがある。
米国のシェール革命が進展し、米国と同盟諸国が、
サウジやOPECの石油を必要としなくなると、
サウジにおける王室の権威の低下を引き起こし、
米右派が歓喜するサウド家の転覆につながりかねない。
サウド家は、全力でそれを阻止する必要がある。
春信、二枚目、
「蓮採り」です。
シェールの石油ガス田の多くは、数年で枯渇する。
シェール産業は、常に油井を掘り続けねばならず、巨額の投資を必要とする。
低金利の金融環境と、原油価格の高止まりの 両方の永続を必須とし、
かなり基盤が脆弱だ。
シエール革命は金融バブルの申し子だ。
サウド家はおそらくこの点に着目し、サウジがOPECを率いて増産し
原油相場の超安値を数カ月から2年ほど続ければシェール産業は赤字になり、
投資がこなくなって潰れ、
サウド家の脅威になるシェール革命も終わると考えたのだろう。
これが、昨秋来のサウジ主導の原油安の本質だと私は考えている。
米サウジ間では、サウジによる米シェール潰しに対抗するかのように、
米側がサウジに脅威を与えている。
その一つは、米オバマ政権が中東政治におけるサウジのライバルである
イランを制裁解除によって強化しようとする隠然策をやっていることだ。
米軍顧問団がイエメンから無意味に撤退し、
残置した武器が親イランのフーシ派にわたるように画策し、
サウジがイエメンに侵攻せざるを得ない状況を作ったことも、
米国がサウジに脅威を与えている。
サウジは表向き親米の外交姿勢を保っているが、おそらくサウド家の実際の戦略は、
もう米国を信用しないし頼らないようにする方向だろう。
「サウジは親米の国です」と断言している中東専門家たちは、
政府の宣伝を請け負っているだけだろうが、
本心からそう考えているとしたら間抜けだ。
サウジ主導の原油安が始まった当初、数カ月後の今年の夏ごろには、
ジャンク債を中心としたシェール産業の資金調達が困難になり、
シェールの新規油井の採掘が急減するとか、
シェール産業発行のジャンク債が債務不履行になり、
金融危機の引き金を引くという予測が米国にあった。
今でも「米国のシェール採掘(フラッキング)会社は昨年61社あったが、
今は41社に減った。今年末までに20社になるだろう」との予測がある。
今夏に全米の原油備蓄タンクがぜんぶ一杯になり、それ以降、
石油がたたき売りされて相場が再急落する、との予測もある。
しかし、冒頭で紹介したIEAの報告書が示すところは、
米シェール産業の底力が予想より強いということだ。
それは技術力向上のおかげだと報じられていることもすでに書いたが、
シェール産業の底力は、技術力よりも金融力だろう
(シェール革命はもともと金融界の創案であり、
技術力を喧伝するのは最初から目くらましの機能だった)。
米金融界が、米国の債券金融再崩壊を防ぐため、
シェール産業のジャンク債が破綻せず新たな起債で延命できるよう
取りはからっているのが、シェールの最大の底力だろう。
原油安でシェールのジャンク債が破綻し、
それが米金融界全体の再崩壊に拡大する可能性は当面、低そうだ。
しかし、シェール業界は今後も薄利もしくは赤字気味の状態のままだ。
その一方で、QEやゼロ金利など長期化した不健全な金融緩和策が
そろそろ縮小されていくとの見通しが 意図せぬ債券金利の急騰を引き起こす
「金融緩和策縮小時の市場の癇癪」「テーパー・タントラム(taper tantrum)」
の発生が懸念されている。
最近、グリーンスパン元連銀議長が「テーパー・タントラムが起こりかねない」
と発言し、関係者を驚かせている。
シェール債券が米金融の再危機を起こすのでなく、
他の要因から起きた再危機がシェール債券に波及し、金融からシェール産業が崩れ、
サウジの勝利になる可能性はある。
先日、米ジャーナリストのセイモア・ハーシュが
「2011年の米軍特殊部隊によるパキスタンでのオサマ・ビンラディン殺害は、
米国がパキスタン政府に何も言わず挙行し、
パキスタン政府はそこにビンラディンが住んでいることすら知らなかった
ことになっているが、それはウソで、
実はビンラディンは、母国のサウジ王政から依頼されたパキスタン当局によって
06年から幽閉されていた。
パキスタンの諜報員がそれを米当局に漏らし、殺害劇になった。
サウジは、ビンラディンが米国に捕まって
サウジ王政に支援されていたことを自白することを恐れ、幽閉していた」
という趣旨の暴露記事を書き、話題になった。
米政府は当時、ビンラディンを殺害したと発表したが、
その証拠となるビンラディンの遺体の写真などを全く発表していない。
米政府が襲撃した先に本当にビンラディンがいたかどうか怪しい。
証拠を発表していないことから考えて、米軍はあの時ビンラディンを殺していない。
ハーシュの記事は、真実の暴露でなく、
新たに米当局筋が漏洩したプロパガンダを記事にしただけでないか。
私だけでなく、米元国務次官補のポール・クレイグロバーツも、そのように疑っている。
ハーシュの記事は、サウジがパキスタンに命じ、
米国に隠れてビンラディンを幽閉させていたことを書いている。
これはサウジとパキスタンにとって、米国との関係を悪化させる不名誉な話だ。
米当局がハーシュに情報を漏洩して記事を書かせたのは、
サウジとパキスタンに新たな意地悪をして、
両国を米国からますます遠ざけるためでないかと私は勘ぐっている。
パキスタンには最近、中国の習近平主席が訪れ、
巨額のインフラ整備事業を約束している。
サウジを反米の方に、パキスタンを親中国の方に押しやる、
米当局の隠れ多極主義の策略が、ハーシュの記事の騒動の裏に透けて見える。
↑
ユダ米もサウジ王室も潰れればよいのさ、ともに地球の癌細胞です。
傀儡師は偽ユダヤ=シオニストで、これが元兇です。
中東、アフリカを撹乱させておるのは西欧の背後におるシオニストどもです。
春信、三枚目、
「蹴鞠」です。
大風呂敷かw
◆http://melma.com/backnumber_45206_6210806/
宮崎正弘の国際ニュース・早読み(今度は李克強首相が大風呂敷)
発行日:5/22
今度は李克強首相がブラジルで大風呂敷
産業団地ごと輸出し、相手国の経済発展に協力する、って
****************************************
すっかり経済プログラム策定の主導権を習近平に奪われた観があった
李克強首相 率いる国務院。
中国でそもそも経済方面を所管するのは国務院である。
反撃するかのように李克強首相は
別のファンドによる外国投資プログラムを訪問先のブラジルで派手にぶち挙げた。
ソブレンファンドと呼ばれる「中国国富ファンド」(CIC)子会社を通じて300億ドル、
合計700億ドルで「工業団地まるごと輸出」を行うという壮大な風呂敷だ。
シルクロード財団は400億ドルだから、それよりも金額も多く、
また国務院所所管の「CICファンド」の子会社を設立するという手段も、新手である。
習近平の対抗姿勢が見え見えである。
中味を見ると鉄鋼、造船、化学、機械、通信、繊維産業ならびに
宇宙・航空産業の「工業団地」を相手国に設営し、
経済発展の向上に協力するというもの、
名付けて「MADE IN CHINA 2025」。
プロジェクト名が象徴するように十年後の2025年を目標に、
ブラジル、メキシコなどに 中国企業団地を移設する腹づもりらしい。
AIIB、BRICS、そしてシルクロード基金の
いずれもが 中国の在庫一掃と中国企業の雇用確保を狙ったものであり、
それに輪をかけて 今度は
中国企業をプロジェクトごと外国へ輸出しようという、とてつもない計画である。
大生風呂敷をひろげるのは得意中の得意の中国だが、
たたみ方を知らないという特性もある。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♪
(読者の声1)
貴誌4534号(5月10日付け)によれば、英国総選挙に11名の華人が立候補していたとか。
結果は保守党が単独過半数となりキャメロン政権続投ですが、
華人候補者のなかで当選した人は居たのでしょうか?
(JJセブン)
(宮崎正弘のコメント)
ひとり、当選しております。移民二世で
広東省から香港へのがれた両親が苦労して英国へ移住し、本人は英国生まれ。
早熟で16歳で保守党活動に目覚め、ケンブリッジを卒業後、
政治に身を投じた アラン・マク(中国名=?倫麦)。弱冠31歳。
「小売商の息子」として庶民の人気をあつめたあたり、
やはり「小売商の娘」だったサッチャーと境遇が似ているかも。
英国政界始まって以来の華人政治家誕生で、評判になっていますね。
他方、日本では先の統一地方選、
新宿区議に立候補したタレントの「李小牧」は大差で落選でした。
「歌舞伎町の案内人」とかで、マスコミの片隅に登場し、
北京の代理人のようなことを喋り、二月に帰化したばかりで、
はやくも四月に立候補した。
歌舞伎町の華人数万と言われますから、当然、当選を見込んでいたのでしょうが、
世間はそれほど甘くはなかった。
甘かったのは日本のマスコミで
「開票速報の会場にはNHK,日本テレビ、フジテレビ、NEWSWEEKなど
大手マスコミも詰めかけていた」(陽光導報、5月1日号)とか。
新宿区議は定員38名に対して52名が立候補、
李小牧の得票は1018票で、最下位当選者に422票もの大差がついていました。
惨敗といって良いでしょう。
↑
帰化、即、被選挙権も得られる、という現行制度、如何か? と思う。
選挙権は行使できるが、被選挙権は孫(3世)から、が至当ではないのか?
日本で教育を受け社会に適応し、貢献できる、となるのには三代はかかるでしょうw
「特亜系」は特に公職を蓄財の手段と見做し、公私混同がデホルトですから。
大阪とか「特亜系」が多いところは、すでにいろいろ・・・
でしょ。