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暑中お見舞い

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 画は ポール デルヴォー ( Paul  Delvaux )

 1897年 ~ 1994年

 ベルギー生まれの画家。

 静寂さの中に幻想的な世界が広がるその作風によって、
 「幻想画家」という形容もなされる。
 「鉄道オタク」でもあるw                   作


  「Aurore 夜明け」です。


☆晴れ。

論者持論の「隠れ多極主義」ですが、はて、

◆https://tanakanews.com/180724trump.htm
田中 宇(さかい) 2017年7月24日
◎軍産の 世界支配を壊す トランプ


昨今の国際情勢は、「軍産複合体」(深奥国家、軍産)の存在が
見えていないと理解できない。

軍産は、米国の諜報界を中心とする「スパイ網」で、
第2次大戦後、米政界やマスコミ、学術界、同盟諸国の上層部に根を張り、

冷戦構造やテロ戦争(第2冷戦)の世界体制を作って
米国の覇権体制を維持してきた。

米国の諜報界は、第2次大戦中に英国(MI6)の肝いりで創設され、
当初から英国に傀儡化・入り込まれている。

英国は冷戦終結まで、英米間の諜報界の相互乗り入れ体制を使い、
軍産の黒幕として機能し、英国が間接的に米国覇権を動かしてきた。

911後、英国の代わりに、中東情勢に詳しいイスラエルが軍産の黒幕となった。


トランプは、軍産の支配構造・覇権体制を壊す戦略を、相次いで展開している。

首脳会談による北朝鮮やロシアとの敵対の解消、

同盟諸国の少ない軍事費負担を口実に NATOを脱退しようとする動き、

関税引き上げの貿易戦争によって 同盟諸国との関係を意図的に悪くする策、

NAFTAやTPPからの離脱など、

トランプの軍産破壊・覇権放棄戦略は、安保と経済の両面にわたっている。

米国の上層部には軍産支配を好まない勢力も冷戦時代からいたようで、

これまで軍産の戦略が失敗するたびに、失敗からの回復を口実に、

軍産の支配体制を壊そうとする動きが起きた。

ベトナム戦争後の米中和解、その後の米ソ和解(冷戦終結)などがそうだ。

911以来のテロ戦争が失敗した後に出てきた今のトランプも、その流れの中にいる。


軍産の一部であるマスコミは、自分たちの正体を隠すため、

トランプが軍産と戦っている構図を報じない。

大半の人々は、マスコミ報道を鵜呑みするしかないので

軍産の存在を知らない。

多くの人々は、素人のトランプが 専門家(実は軍産)の助言を無視し、

有害で不可解なことを続けている としか思っていない。

しかし実際には、人類の未来を賭けた、

トランプと軍産との激しい暗闘が続いている。

米国が世界で唯一の覇権国である限り、米国上層部での、

軍産派と 反軍産派との暗闘が続き、

軍産のふりをして 戦略立案担当部局に入り込んだ反軍産派が、

軍産による戦争戦略を過剰にやって失敗させ、

ベトナムやイラクの失敗が繰り返され、何百万人もの人が死ぬ。

軍産支配が続く限り、中国ロシアなど 新興市場諸国の経済発展が、

経済制裁によって抑止され、世界経済の発展を阻害し続ける。

この悪しき状況を脱するには、

米国が唯一の覇権国である戦後の世界体制を解体し、

覇権の一部を米国以外の国々に持たせる「覇権の多極化」が必要だ。


米国の力が低下した70年代には、日独に覇権の一部を持たせる構想が出た。

だが、戦後の日独は上層部が 米国傀儡の軍産であり、

日独は、米国からの覇権移譲を拒否した。

日本への覇権移譲に前向きだった田中角栄は、

日米の軍産から ロッキード事件を起こされて無力化された。

多極化は、同盟国以外の国々、つまり中露やBRICS、イランなど

非米諸国を対象に 行われる必要がある。

非米諸国の中で、特にロシアは、

米ソで世界を二分していたソ連時代の遺構があり、

米国からの覇権移譲に積極的だ。

それだけに、軍産はロシアを激しく敵視している。

14年からのウクライナ危機は、ロシア敵視強化のために米諜報界が起こした。


軍産(米諜報界やマスコミ)は、中国やロシアがいかに悪い国であるか、

多くの歪曲や誇張を含む形で延々と喧伝(諜報界からのリークとして特ダネ報道)し、

米国が中露を敵視せねばならない構図が定着している。

歴代の米大統領は、軍産の力を削ぐため 中露に覇権の一部を譲渡したくても

「敵に覇権を渡すなど とんでもない」という主張に阻まれて失敗する。

米国が、覇権の一部を中露に渡すには、正攻法でなく、

逆張り的な手法が必要だ。

その手法は、少なくとも2種類ある。


逆張り手法のひとつは「過剰敵視 策」で、

中露イランなどの非米諸国を ことさら敵視し、

非米諸国が団結して自分たちを強化し、米国の覇権外に

新たな国際秩序(地域覇権体制)を作るように仕向け、

この新たな非米的国際体制の地域に対する覇権が、

米国の手から離れていくようにするやり方だ。

01年の911事件で軍産が米国の政権を再掌握したことを受け、

中露の結束が強まり、上海協力機構やBRICSなどが、

非米諸国のゆるやかな同盟体として立ち上がった。


逆張り手法のもうひとつは「再建押し付け 策」で、

米国が中東などで間抜けな戦争を起こして泥沼化して失敗し、

その後始末と国家再建をロシアやイランなど非米諸国に任せ、

その地域をロシアやイランの覇権下に押しやる方法だ。

この手法は、米国の軍事占領の失敗とともにイランの傘下に入ったイラク、

軍産がISアルカイダにやらせた内戦が失敗した後で

ロシアとイランの傘下に入ったシリア、

軍産が扇動して核武装させた後、

中国の傘下に押しやられた「6か国協議」以来の北朝鮮などで行われてきた。

最近では、軍事政権復活後に情勢不安定が続くエジプトや、

その隣国で軍産に政権転覆させられ失敗国家になっているリビアも、

ロシアに再建が任されている。

イスラエルの安全保障もロシアに任された。

ロシアは中東の覇権国になっている。




Delvaux、二枚目、



「Crucifixion 磔, 1952」です。




▼同盟諸国を怒らせて 対米自立させる トランプ独自の新戦略

70年代の金ドル交換停止や ベトナム戦争など、

覇権放棄・多極化の 逆張り手法は昔から行われてきた。

トランプが初めて手がけた逆張り手法は、同盟諸国に対する過剰敵視策だ。

これは、貿易と安保の両面にわたっている。

トランプは「敵方」の中国だけでなく、同盟国であるEUやカナダ、日本にも

懲罰関税の貿易戦争を仕掛け、同盟諸国を、

米国に頼らない貿易体制を考えざるを得ない状況に追い込んでいる。

TPPやNAFTAからの離脱も同様だ。

同盟諸国は、米国に頼らない分、中国など非米諸国との貿易を強化せざるを得ない。


安保面では、同盟諸国が軍事費を増やさない場合、

NATOから離脱するとトランプが表明したのが、トランプ独自の逆張り策だ。

同盟諸国に軍事費増加を強く求めるのは、軍産が以前からやってきたことだ。

トランプは、この要求を過剰・過激に展開し、

NATO離脱までつなげようとしている。

今のところ共和党内の軍産の猛反対を受け、トランプはNATO離脱構想を

すぐに引っ込めたが、もし11月の中間選挙で共和党が

議会上下院の多数派を維持できたら、米政界でのトランプの力が強まり、

トランプはNATOとWTOから離脱を決断するとの予測が出ている。

トランプは、日本やEUに対し、ドル高・円安ユーロ安を維持するQEなど

緩和策をやめろ と言い出している。

また彼は最近、伝統的な米連銀の自立性
(を口実にした大統領弱体化・軍産強化策)を破り、米連銀に、

利上げしないでドル安・低金利を維持しろ と加圧し始めている。

これらは貿易戦争と相まって、短期的な対米輸出の抑制と、

長期的な米国債券への信用低下をもたらす。

米覇権に永久にぶら下がりたかった同盟諸国は今や、

トランプ政権が続く限り、安保と金融貿易の両面で、

対米自立・非米化の方向に追い立てられ続ける。


日本の官僚機構は、自国を滅ぼしても、

自分たちの隠然独裁を守るため 対米従属に固執するだろう。

だが、ドイツなどEUは、EU軍事統合を進め、対米自立していく。


軍産は、16年のトランプ当選以来、トランプがロシアのスパイである

とする「ロシアゲート」の濡れ衣を誇張して スキャンダルに仕立て、

軍産に敵対してくるトランプを無力化しようとした。

このスキャンダルでトランプ側近が何人か辞任したり起訴されたが、結局、

トランプ陣営入り以前の行動で 微罪になった者がいただけで、

トランプ政権としての犯罪行為は何も出てこなかった。

今年初め以降、共和党のトランプ支持議員たちが、

民主党オバマ政権がトランプを陥れるために(軍産の一部である)

FBIなどを使って過剰な捜査や歪曲された報告書を作った容疑を問題にして

反撃し始めた。

ロシアゲートの中心部は、

ミュラー特別検察官によるトランプ陣営に対する捜査だが、

この捜査に対する米国民の支持は減り続けている。

半面、トランプへの支持は増えている。

ロシアゲートで軍産がトランプを弱体化するのは不可能になっている。


トランプは政権の1年目、軍産からロシアゲートで攻撃されていたため、

軍産(特に共和党内)からの反対が少ないNAFTAやTPPの離脱から、

覇権放棄・同盟国の非米化追いやり策 を開始した。

トランプは今年5月、イラン核協定からの離脱も決行したが、

これも、オバマが作ったイラン核協定の体制下で

イランと経済関係を拡大していた欧州や中国が、

米国抜きのイラン核協定を維持せざるを得ない状況を作り、

世界体制の非米化(多極化)と 米国の覇権放棄を進めようとする逆張り戦略だ。

もともとイラン敵視は軍産の戦略だ。

トランプはこれを過剰に進め、

覇権を軍産の手から引き剥がす逆の効果を出している。

トランプが昨年末に決定した、駐イスラエル米大使館のエルサレム移転も、

軍産の「親イスラエル・反イスラム」の策を 過剰にやり、

米国がパレスチナ問題を放棄する 覇権放棄の領域まで到達させる計略だ。

イスラエルは昔から米国に大使館のエルサレム移転を頼んでいただけに、

それが米国の中東覇権の放棄につながるものであっても断れない。


トランプは、今年に入ってロシアゲートの濡れ衣を克服し始めた後、

6-7月に北朝鮮やロシアとの首脳会談を相次いで挙行した。

北朝鮮もロシアも、軍産の存在基盤ともいうべき敵視策の対象国だ。

北やロシアが米国の敵でなくなると、

軍産は、米国覇権を維持してきた 世界的な敵対構造の重要部分を失う。

韓・在日米軍の撤退や、NATOの解散ないし無意味化が 引き起こされ、
 
朝鮮半島は中国の覇権下に移り、欧州は対米自立して親露的になって、

戦後の米国覇権が崩れて 多極化が進む。

北朝鮮が中国の覇権下に、中東がロシアの覇権下に入るのは

数年前からの流れだが、

トランプの首脳会談は、この流れを加速する効果がある。

トランプは、金正恩やプーチンとの首脳会談で、

閣僚を同席させない 1対1の会談 を中心に据えた。

これによりトランプは、金正恩やプーチンと

個人的に親しい首脳間の関係を築き、首脳間で親しい関係がある限り、

もう北もロシアも米国にとって脅威でないと言い始めた。

首脳会談は米朝も米露も、決定的なことが決まったわけでない。

米朝首脳会談は史上初だったが、北朝鮮はその後、

核廃絶の具体的な動きを加速しておらず、

軍産傘下のマスコミは「米朝会談は失敗だった」と喧伝している。

米諜報界は傘下のマスコミに「北朝鮮が核ミサイル開発を再開したようだ」

とする根拠の薄い捏造誇張的な情報を流して報じさせ、トランプに対抗した。


米露首脳会談は、事後の発表の中身が薄く、

おそらく重要な決定(主に中東問題。シリア、イスラエル、イラン)が

非公開のままになっている。

会談後の米露並んでの記者会見でマスコミはロシアゲートばかり問題にし、

首脳会談の見える部分がますます無意味になった。

軍産側(元CIA長官ら)は

「プーチン非難しなかったトランプを 大逆罪で弾劾すべきだ」」とまで言っている。

米朝と米露の首脳会談は、軍産によって悪い印象を塗りたくられたが、

トランプが北やロシアの首脳と個人的に親密な関係を構築して

敵対を減らしたことは生きている。

米朝関係の改善とともに、韓国が北との関係を強化し、

中国は北への経済制裁を隠然と解除した。

トランプがいる限り、軍産が邪魔しても、

米朝関係は「味方でないが 敵でもない」状態が続き、

そのすきに 韓国中国ロシアが、北を非米側の経済圏に取り込み、

北が経済的に安定し、南北の和解が進んで、核問題を棚上げした状態で、

実質的な朝鮮半島の和平が米国抜きで進む。

日本は、北と和解しないなら、東アジアの新秩序の中で孤立していく。


米露関係についてトランプは、中東の覇権をプーチンに引き渡す動きと並んで、

トランプが欧州との同盟を粗末に扱う一方で ロシアと親しくするのを見て、

欧州諸国が、自分たちも米国との同盟を軽視して

ロシアと親しくしようと考える新たな傾向を生んでいる。

ポピュリスト政党出身のイタリアの内相は先日、

14年のウクライナ政権転覆について

「外国勢力(米諜報界)が発生を誘導した インチキなものだ」と

正鵠を穿つ発言をテレビの取材で表明し、

ウクライナの米傀儡政権を激怒させた(痛快)。

ドイツでは主流派の中道左派のSPDは、対米自立と対露協調を望んでいる。

トランプの別働隊であるスティーブ・バノンは最近、

欧州の 親露・非米的なポピュリスト勢力の台頭を支援する政治運動を

ブリュッセルで立ち上げた。

この運動は表向き「EUを壊す」のが目標だが、

裏の実体的な目標は「EUを怒らせて対米自立させる」ことだろう。


マスコミを読んでいるだけだと、米国ではいまだにロシア敵視が強い

と思いがちだが、米国の有権者、とくに共和党支持者は、

79%がトランプの米露首脳会談を支持している。

共和党の草の根におけるトランプの支持が増えている。

トランプの戦略は、軍産マスコミを飛び越して、直接に米国民に伝わっている。

対抗する米民主党は、草の根で反軍産的な左派が伸張して

軍産傀儡の党主導部の議員たちへの反逆を強め、党内が分裂している。

このまま行くと、中間選挙も次期大統領選挙も、トランプの共和党が優勢になる。

不測の事態が起きない限り、トランプが軍産支配を破壊する流れは今後も続く。




Delvaux、三枚目、



「el-camino 道」です。



「疑わしきは 被告人の利益に」、だと思いますよ、

通説は、

◆http://my.shadowcity.jp/2018/07/post-13635.html
ネットゲリラ   (2018年7月26日 )
◎私の私のカレーは ーあの世行きー

ご参照あれ!



が、不審 多々あり で、

◆http://www.asyura2.com/09/nihon29/msg/184.html
投稿者: 児童小説 日時: 2009 年 4 月 22 日 nh40l4DMIETCQ
◎「和歌山毒カレー事件」の「冤罪 疑惑」 
 (「本当のことを言えば、裁判はひっくり返る」)


『真日本タブー事件史』(宝島社・2008年5月20日発行) |
林眞須美さんを支援する会 / 林真須美

『「静かに広がる「和歌山毒カレー事件」の「冤罪疑惑」、
浮上する 捜査と証拠の「不自然」』


日本中から「毒婦」と呼ばれた林眞須美被告人が

一、二審で有罪・死刑判決を受け、現在は上告中の和歌山毒カレー事件。

状況証拠のみ、動機も未解明 であるこの事件の

冤罪疑惑が発生から約10年になる今、静かに広がってる。

この事件には、たしかに冤罪と不正捜査を疑わせる事実があまりにも多い──。

「和歌山毒カレー事件 囁かれ始めた冤罪説を追う」と題した拙稿が、

別冊宝島1441号『日本タブー事件史2』に掲載されたのは、

今から約1年前になる。

本稿は、その原稿をほぼ全面的に書き改めたものだ。

原稿を全面的に改訂した理由は二点ある。

第一に、この事件の冤罪疑惑が「囁かれ始めた」という時期を

もうとっくに過ぎている。

かつて日本中から「毒婦」と呼ばれた林眞須美被告人の有罪判決に疑問を持ち、

事件の再検証をする取材者が この1年でずいぶん増えたため、

前回の原稿が現在(2008年4月)の状況にそぐわなくなってしまったのだ。

第二に、前回の原稿を執筆後、公判記録などを元にこの1年間、

事件の再検証を進めてきた私の考えがかなり変わっている。

ありていに言うと、今ではこの事件を冤罪だと 私は確信し、

こんな裁判がよくまかり通ってきたものだと呆れているのだ。

「タブー事件史」と題された本書を 手にされるような方なら、

世間に広く流布していない論説を耳にしても、さほど驚くことはないはずだ。

とはいえ、この事件が冤罪だと聞いても、ピンとこない方のほうが多い

と予測する。 私がそう予測するのは、この事件の公判の「本当のところ」が

これまでほとんど報じられていないに等しいからだ。

この事件の一、二審では、弁護人によって、眞須美被告人を

カレー事件の犯人だと信じるには 不合理な事実や、

捜査の不正を伺わせる事実 が数多く明らかにされている。

私の調査結果も交えながら、今回はその一端を紹介させて頂こう。

読者諸氏が、本稿の情報すらも客観的・批判的に見つめながら、

この事件の真相を再考察してくれたなら幸いだ。


───────────────────
直接証拠ゼロ、動機も未解明
───────────────────

まず、和歌山毒カレー事件のあらましを一応、確認のために振り返っておく。

この事件が発生したのは、今から約10年前、

1998年7月25日午後6時頃である。

和歌山市郊外の園部という新興住宅地で催された夏祭りで、

亜ヒ酸 が混入されたカレーを食べた67人が急性ヒ素中毒に陥り、

うち4人が死亡した。

そんな被害の甚大さに加え、マスコミ総出の熾烈な取材合戦を
ご記憶の方も多いだろう。

メディアが眞須美被告人と、白アリ駆除業を営んでいた夫の健治氏を

「疑惑の夫婦」と呼び、「保険金目的で周囲の人物たちに

ヒ素や睡眠薬を飲ませていたらしい」という夫婦の疑惑を

洪水のように報じ始めたのは、事件発生から1ヶ月ほど経った頃からだった。

それからほどなく、「疑惑の夫婦」のうち、

元保険外交員の妻(眞須美被告人)こそが カレー事件の犯人だと

ほのめかす報道が増えていく。

その根拠として当時、盛んに報じられていたのが、

健治氏のほうは自分自身もヒ素中毒らしき症状で

何度も入退院していたことだ。

要するに、保険業界の内部事情に精通した眞須美被告人が

保険金詐欺の主犯で、共犯者の夫にすらも

保険金目的でヒ素を飲ませていたと捜査本部が目星をつけ、

それにマスコミも一斉に追随したわけだ。

あの保険金疑惑報道によって当時、眞須美被告人がカレー事件の犯人だ

という心証を固めた人は決して少なくなかったろう。

しかし、カレー事件と 保険金詐欺はあくまで「別の事件」である。

洪水のような犯人視報道と裏腹に、

眞須美被告人を犯人とする証拠はきわめて貧しいのが

カレー事件の実態だ。

げんに、捜査機関はカレー事件の 直接証拠を一切発見できないまま、

事件発生から約2ヶ月後の同年10月4日、

保険金詐欺などの容疑で 眞須美被告人を別件逮捕せざるをえなかった。

その後も眞須美被告人は本件のカレー事件で逮捕されるまでに、

二度も別件で再逮捕されている。

このように捜査機関が逮捕・勾留を繰り返したのは、

めぼしい証拠が見つからなかったため、

眞須美被告人から自白を引き出したかった からに他ならない。

それでも、眞須美被告人は黙秘したまま、

2002年12月11日に一審の和歌山地裁で有罪・死刑判決を言い渡されている。

さらに黙秘を撤回し、自分の言葉で無実を訴えた二審の大阪高裁で

05年6月28日に下された判決も、再び有罪・死刑だった。

テレビや新聞の言葉を借りれば、

「検察が状況証拠の積み重ねで 有罪の立証に成功した」わけだ。

ただし、動機は結局、未解明である。

世の中に衝動的な殺人はいくらでもあるが、

カレー事件のようなことが起こって大騒ぎになれば、

眞須美被告人はむしろ困る立場 だったのだ。

一円の得にもならない上、過去の保険金詐欺が発覚するリスクを背負ってまで、

眞須美被告人がカレーに亜ヒ酸を混入したくなる動機など、

何かありえるだろうか? 

事件発生当時から指摘されていたこの疑問について、

裁判で答えは何も見つかっていないのだ。



───────────────────
住民らの証言は激しく変遷
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では、裁判で眞須美被告人はどのような根拠で有罪とされているのか? 

一、二審の判決文を検証すると、以下の4点に集約される。


  ①犯行に及ぶ機会があったのは、事件当日の午後0時20分頃から
   1時頃まで 1人でカレー鍋の見張りをしていた被告人だけである。

  ②被告人はカレー鍋の見張りをしていた時、不自然な行動をしていた。

  ③被告人の周辺から発見された亜ヒ酸と、
   カレー鍋に混入されていた亜ヒ酸は、
   科学鑑定などから「同一」だと認められる。

  ④ヒ素を人を殺害する道具に使っていたのは、
   被告人以外の事件関係者には認められない特徴である。
   被告人は、人の命を奪うことに対する罪障感、抵抗感が鈍麻していた。


①~④はどれも詳細まで検証すると、きわめて胡散臭いのが実態だ。

まず、①についてだが、事件当日、自治会の主婦らが

民家のガレージで午前8時30分頃にカレーをつくり始めてから、

被害者らが午後6時頃にカレーを食べ始めるまで、9時間以上もあったのだ。

しかもその間、交代でカレーの調理や見張りを務めた10人以上の主婦に加え、

無数の人間がカレー鍋の周りを行き来していたことが証拠上明らかになっている。

にも関わらず、9時間以上の間に40分間だけ、

カレー鍋の周りに眞須美被告人しかいなかった時間帯があったと

検察官や裁判官は言うのだが、いささか都合が良すぎよう。

げんに、検察がこのような立証をするため、

公判で事件当日の行動をまさに「分刻み」で

詳細に証言させた住民たちの記憶が、本当にオリジナルの記憶なのか、

疑わざるをえない事実も 明らかになっている。

たとえば、住民らは 捜査段階で事件現場や警察学校に一同に集められ、

事件当日の再現検証をやらされていた。

しかも、住民らは法廷に立つ前に一様に

4~5回の証人テストを受けさせられていた。

これなら、捜査機関が住民らの記憶を都合良く塗り替えようと思えば、

いくらでも塗り替えられたろう。

実際、住民らの供述は変遷が激しかった。

事件発生まもない時期、警察官が録取した調書にはなかった供述が、

事件発生から約4ヶ月とか、約1年3ヶ月経って

検察官が録取した調書に現れている例も あったほどなのだ。



───────────────────
証拠の貧しさを物語る目撃証言
───────────────────
眞須美被告人がカレー鍋の見張りをしていた時、

不自然な行動をしていたとされている認定(前記②)についても、

眉唾物というしかない。

ここでは、眞須美被告人の「不自然な行動」を目撃したことになっている

証人を仮にA子としよう。

A子は、カレー鍋が置かれていた民家のガレージの向かい側の家の住人だ。

A子証言の概要は次の通り。

「被告人は、カレー鍋の置かれていたガレージの中で

クマみたいに行ったり来たりしながら、カレー鍋のフタをあけ、

中をのぞきこんでいました」

この証言については事件発生当時から、

あたかも決定的な目撃証言であるかのように報じられていた。

そして実際、この事件の裁判において、この証言は

有罪の有力な証拠として取り扱われている。

しかし、そのことは逆に、この事件がいかに

証拠が貧しいかを如実に物語っている。

というのも、A子証言における「カレー鍋」とは、正確に言うと、

「事件現場に2つあったカレー鍋のうち、

亜ヒ酸が混入されていなかったほうの鍋」に過ぎないのだ。

亜ヒ酸が入っていなかった鍋のフタをあけたところで、

一体どこが「不自然な行動」なのだろうか?

普通に考えれば、有罪の証拠になりうるか否かすら疑問であるこの証言は、

その信用性に疑問符がつく点も数多くある。

とくに際立つ点を3点ほど紹介しよう。

  第一に、A子証言は捜査段階で不自然きわまりない変遷をしている。
  当初、「自宅1階のリビング」としていた目撃場所が途中から、
  「自宅2階の寝室」へと変わっていたのだ。
  捜査の過程で証人の供述が変遷すること自体は普通だが、
  それにしても、1階から2階とは、あまりにも大胆な変わり方である。

  第二に、このように供述が不自然に変遷したことについて、
  A子が事情を説明した供述も不自然だった。
  というのも、検察官調書では、A子は「目撃場所の勘違い」に
  気づいたキッカケとして、
  「ガレージにあったコンロや赤いゴミ箱の見え方、
  被告人の目線や首、肩の見え方など、
  自宅1階のリビングからのガレージの見え方が記憶と違う
  ことに疑問を持ちました」
  などと説明したことになっていた。
  A子は法廷でも、同様の供述をしている。
  しかし、先に述べたように事件当日、10人以上の主婦たちが
  カレーの調理や見張りのためにこのガレージを出入りしていた
  にも関わらず、「赤いゴミ箱を見た」と証言した者は
  A子以外に1人もいないのだ。

  第三に、事件当日の眞須美被告人の服装に関しても、
  A子の証言はその他の住民たちの証言と食い違っていた。
  具体的に言うと、事件当日に眞須美被告人を目撃した
  他の住民たちの誰もが、捜査段階では眞須美被告人の服装を
  「黒だった」「黒っぽかった」と証言していた。
  加えて、当の眞須美被告人も二審の公判で
  「事件当日は黒いTシャツを着ていた」と証言した。

  そんな中、A子だけが捜査段階から一貫して、
  眞須美被告人の服装を「白いTシャツ」だったと証言しているのだ。
  こうなると、A子が目撃したと言っている「白いTシャツ姿の人物」は、
  眞須美被告人ではなく、他の誰かではないか
  と考えるのが通常の感覚であるはずだ。
  実際、二審で眞須美被告人は「白いTシャツ姿だったのは、
  一緒にいた(自分の)次女。カレー鍋のフタをあけたのも次女で、
  味見をするためだった」と証言している。
  これは、次女の証言とも合致する内容だ。
  加えて、事件当時は中学2年生だった眞須美被告人の次女は、
  写真週刊誌『フライデー』に眞須美被告人と誤認され、
  その姿を撮影された写真を掲載されたほど、
  眞須美被告人と背格好が似てもいた。

  これらをもって弁護側は一、二審共に、A子が目撃した人物を
  「次女」だと主張した。これは、A子証言の信用性だけでなく、
  「犯行に及ぶ機会があったのは、事件当日の午後0時20分頃から
  1時頃まで1人でカレー鍋の見張りをしていた被告人だけである」
  とする前記①の 検察のストーリーも突き崩すための主張だった。
  一、二審判決はこの主張を退けるにあたり、
  眞須美被告人の証言を「他の住民らの証言とことごとく矛盾する」(二審)、
  次女の証言を「関係住民の供述と大きく食い違う」(一審)、
  「母親をかばうための虚偽」(二審)などとしたのだが、
  これもいかがなものか。
  普通に考えれば、他の住民らの証言と矛盾するのは、A子証言のほうだろう。


───────────────────
不自然な証拠にまつわる核心証言
───────────────────

眞須美被告人の周辺から発見された亜ヒ酸と、カレー鍋に混入されていた亜ヒ酸が
「同一」だとされている点(前記③)については、

大型放射光施設「スプリング8」をはじめとする
最先端の科学技術を用いた3回の鑑定の結果を元に認定されている。

しかし、公判では鑑定結果がどーこー以前の問題として、
鑑定資料となった亜ヒ酸にまつわる不自然な事実が数多く明らかになっている。

いくつかある証拠の亜ヒ酸の中でも、何より不自然さが際立つのが、
眞須美被告人の自宅の台所から発見された「プラスチック容器」に
付着していた亜ヒ酸だ。

まず、このプラスチック容器は、事件発生から約2ヶ月以上経ち、
眞須美被告人が逮捕された後の家宅捜索で発見されている。

つまり、眞須美被告人が本当に犯人ならば、
そんな重要証拠を 2ヶ月以上も自宅に置きっぱなしにしたことになるわけだ。

この不自然さを二審判決は「被告人はマスコミの取材攻勢に遭い、
同容器を投棄するなどして処分するのが困難な状況であった。

その中で内容物を洗い流すなど、可能な限りの罪証隠滅をしていた
と評価して差し支えない」などと一応、説明してはいる。

しかし、この裁判官の論理ではまったく説明がつかないのが、
この容器の側面に マジックで大きく「白アリ薬剤」と書いてあることだ。

事件発生当時、「亜ヒ酸は白アリ駆除などに使われている」

「疑惑の夫婦は白アリ駆除業を営んでいた」などと連日、

盛んに報じられていたことを思えば、この事件において「白アリ薬剤」とは

「亜ヒ酸」と同じ意味の言葉である。

これでは、「可能な限りの 罪証隠滅をしていた」とは到底言えないだろう。

また、林一家の旧宅のガレージから発見・押収されたという缶入りの
亜ヒ酸についても、不可解なことがある。

この缶の発見経緯から説明しよう。

この家は善明寺という園部の隣町にあり、

事件発生当時の住人は林夫婦の知人男性のT氏である。

林夫婦は事件の約3年前、この家をT氏に売却したのだが、

園部に引っ越し後もT氏に頼み、所有物の一部を

この家のガレージに置かせてもらっていた。

そのことから警察はこの家のガレージを捜索し、亜ヒ酸入りの缶を見つけた

という話になっている。

ところが、T氏は3年以上もこの家に住んでいたにも関わらず、

公判で弁護人の尋問に対し、そのような缶の存在に「全然気づかなかった」

と証言しているのだ。

このT氏とは、私は会うことができた。

問題の缶入り亜ヒ酸が発見された家宅捜索を

T氏は「ヒ素がガレージから出てきたと 警察に言われたけど、

俺はあんな缶、全然見覚えがない。あの時はビックリしたわ」

と振り返り、こう言った。

「それから、俺はたしか居間におったと思うんやけど、

警察にガレージに呼ばれ、棚にあった缶を『指させ』と言われたんや」

これは、非常に興味深い話だ。

というのも、この家宅捜索にあたった捜査員の証言によれば、

T氏は缶入りの亜ヒ酸が発見された際、

発見場所のガレージの捜索に「ずっと立ち会っていた」という話になっている。

そして、そのことを裏づける証拠である捜査報告書には、

ガレージの棚に置かれた亜ヒ酸の缶をT氏が指さしている写真が

添付されている。

しかし、T氏が私に語ったことが事実なら、捜査員の証言は虚偽であり、

捜査員が問題の缶を発見した際にT氏は、

その場に立ち会っていなかったことになる。

本当にそうならば、この亜ヒ酸の缶について、T氏が見覚えがなかった

という事実はきわめて重い意味を持つ。


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強引に被害者にされた夫
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眞須美被告人がヒ素を人を殺害する道具に使っており、

人の命を奪うことに対する罪障感、抵抗感が鈍麻していたとされている点(前記④)

については、

要するに「保険金目的で夫や周囲の人物たちに

ヒ素や睡眠薬を飲ませていたらしい」という 別件の保険金詐欺疑惑が、

本件のカレー事件の状況証拠として 有罪の立証・認定に使われているわけだ。

結論から言うと、このような茶番がどうしてまかり通ってきたのか、

不思議である。

はじめから説明すると、検察はカレー事件と同時に、

眞須美被告人が保険金目的で夫の健治氏や知人男性らに

ヒ素を飲ませていたとする 殺人未遂の疑惑4件と、

保険金詐欺の疑惑4件の 計8件を起訴している。

それに加え、保険金目的のヒ素使用疑惑7件、

保険金目的の睡眠薬使用疑惑12件の計19件を、

検察は「類似事実」と称して立証を試みた。

そんな数多くの疑惑のうち、裁判で眞須美被告人の犯行、

もしくは関与があったと認定されているのは、

ヒ素使用疑惑4件、睡眠薬使用疑惑2件の計6件(※A)だ。

まずは、この6件に話を絞ってみよう。

6件の疑惑のうち、1件の疑惑で被害者と認定されているのは、

眞須美被告人の保険金詐欺の共犯者として 懲役6年の実刑判決も受けた

夫の健治氏(2005年6月まで服役)だ。

ちなみに起訴状では健治氏は、約9年間に4回も

眞須美被告人に死亡保険金目的でヒ素を飲まされ、

うち2回で予後不明の急性ヒ素中毒に陥ったことになっていた。

賢明な読者諸氏なら、ここで早くも、

検察が描いた事件の構図がそもそも不合理だったことに気づかれたろう。

健治氏がそんなに何度も眞須美被告人に殺されかけながら、

何も気づかずに 一緒に暮らし続けたことを前提にする検察の主張は

あまりにも無理がある。

実際、健治氏は一審でこそ曖昧な証言に終始したが、

二審では「保険金目的で ヒ素は自分で飲んでいた」と、

自分と妻が純粋な共犯関係だった と訴えている。

詳細は割愛するが、その証言は、

眞須美被告人の証言と細部までほとんど合致するものだった。

それでも、二審判決は健治氏の証言を「妻をかばうための口裏合わせ」

とみなして退け、健治氏を強引に被害者のイスに座らせたのだ。

しかし、夫婦など、元々はアカの他人である。

たとえ妻とはえ、自分を殺そうとした人間を、

自分を貶めてまでかばうほどに お人好しな人間など、

この世に存在するだろうか? 

その点について、健治氏は私にこう言った。

「検察や裁判官は、『林健治は妻をかばっている』なんて

簡単に言いますけど、よく考えてみてください。

私はカレー事件が起こったせいで 過去の保険金詐欺がバレ、

6年の懲役を食らった。

出所後も4人の子供たちと離れて暮らすことになりました。

もしも眞須美がカレー事件の犯人なら、

かばう理由なんか 何もありませんよ」

これが、普通の感覚というものだろう。


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被害者らしからぬ被害者
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問題の6件の疑惑(前記※A)のうち、
健治氏の件以外の5件はすべて、同一人物が被害者とされている。

林家に使用人的な立場で居候していたI氏だ。

このI氏は公判では、検察側の最重要証人と言える存在でもあった。

健治氏が眞須美被告人にヒ素を飲まされていたとする一、二審の認定も、
I氏の証言が最大の拠り所にされている。

それはたとえば、「被告人から提供されたくず湯を食べた健治が、
激しい腹痛と嘔吐を発症するところを見た」とか、

「健治が入院先の病院で意識障害に陥っていた時、病院にやってきた被告人は
健治に『はよ死ね』と真剣な様子で言っていた」などである。


しかし、一方でI氏には、本当に被害者だとは信じがたい事実があまりにも多いのだ。

まず、I氏は起訴状では、約2年間で眞須美被告人にヒ素を4回、睡眠薬を10回飲まされ、
そのたびに激しい腹痛や嘔吐を発症したり、意識不明状態になって入院したことになっていた。

にも関わらず、I氏の病院のカルテには、
I氏が自分の症状の原因を探ろうとした跡が まったく現れていなかったのだ。

また、健治氏が保険金詐欺目的で入院するたび、I氏は健治氏に付き添い、
健治氏が病院側に 症状を重く偽るための協力もしていた。

そしてその都度、ちゃんと健治氏から金銭も受け取っていたのだ。

さらに、I氏は自らが体調が悪くなって入院した際も、いつも症状を実際より重く偽り、
入院期間を引き延ばしていた。

入院するたびに病院を無断外出し、パチンコをしたり、
居候していた林家に戻って 麻雀をするなど、入院生活をむしろ楽しんでいた
としか考えられない事実も明らかになっている。

これで被害者だというのは、さすがにムシが良すぎよう。

実際、裁判でI氏は「不正な保険金収入によって維持された林ファミリーの一員」だった
と認定されている。

とはいえ、これは「林夫婦の共犯者」とまでは認められていないということだ。

I氏が林夫婦の保険金詐欺に協力していた事実について、

一、二審判決共に I氏が林夫婦に経済的に依存していたことなどを根拠に

「林夫婦に利用されていただけ」として片づけたのだ。

さらにこの裁判では、I氏が「無口でおっとりしていて、要領の悪いタイプ」であるため、

I氏が何度もヒ素や睡眠薬を飲まされながら、自分の症状の原因に気づかなかったとしても

「不自然ではない」という話になっている。

こうしてI氏は、被害者のイスに座らせてもらい、健治氏が眞須美被告人にヒ素を飲まされていた

とする検察主張に沿うI氏の証言も、ことごとく信用性が認められているわけだ。

このI氏にまつわる一、二審の認定は、あまりにも無理があろう。

事実関係をみる限り、I氏と捜査機関が「デキている」

とみたほうがはるかに自然であるはずだ。

実際、そのことを伺わせる事実もある。

カレー事件発生後まもない時期から、眞須美被告人と健治氏が起訴されるまで約4ヶ月に渡り、

I氏は警察官官舎で捜査員と寝食を共にしながら 取り調べを受けていたのだ。

このいかがわしさについて、一、二審判決は共に

「(林夫婦の知人ということで)取材攻勢にあっていたI本人の要請により

警察官官舎に保護しただけ」という検察の主張をそのまま認めているのだが、

少なくともI氏には、保険金詐欺の共犯者として立件されてもおかしくない弱みがあったのだ。

仮に「保護」の実態が「身柄拘束」だったなら、捜査機関にとって約4ヶ月は、

I氏から望み通りの供述を引き出すのに 充分過ぎる時間だったろう。


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直撃調査に重要証人は…
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私は実際、I氏の自宅を訪ね、自分が確信する「真相」を出勤前のI氏にぶつけてみた。

「ヒ素は、自分で飲んでいたんですよね?」

横に並んで歩きながらの質問だったが、I氏は「へっ?」と驚いたような声をあげて歩みを止め、

やや間があった後に不機嫌そうな顔をこちらに向け、「飲んでへんって」とだけ言った。

その他にも、私はI氏と並んで歩きながら、I氏が本当に眞須美被告人に

ヒ素を飲まされた被害者ならば、失礼にあたる質問を次々にぶつけてみたのだが、

I氏はほとんど私の顔を見ることなく、携帯電話をいじりながら押し黙ったまま歩き続けた。

たまに返ってくる答えも、「ウソなんかついてへんって」などと短くつぶやくのみだった。

私はI氏が、本当に眞須美被告人にヒ素を飲まされていたとはまったく思っていないが、

それでもやはり、I氏は被害者だと思っている。

警察官官舎で「身柄拘束」された4ヶ月間、I氏は相当厳しく締め上げられたのだろう。

自分の証言により、かつて親しくしていた人間に

死刑判決が言い渡されている現実はI氏にとって、相当心苦しいはずである。

「Iさんが本当のことを言えば、裁判はひっくり返ると思いますよ」

私がそう言った時、終始むっつりしていたI氏が一瞬、

戸惑ったような表情になったのが印象的だった。


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保険金詐欺疑惑の真相
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起訴状では、健治氏やI氏の他にも 4人の人間がカレー事件以前、

眞須美被告人に保険金目的で亜ヒ酸や睡眠薬を飲まされたことになっていた。

被害者だと認定された健治氏やI氏ですら、

かくも被害者だとは信じがたい事実が多いのだから、

被害者だと認定されていない その他の人物たちについても、推して知るべしだろう。

たとえば、起訴状では、眞須美被告人に睡眠薬を飲まされ、

交通事故を起こすなどしたとされていたD氏については、

林夫婦が詐取した保険金の多くは、このD氏所有の休眠会社名義で契約されていた。

また、起訴状では、眞須美被告人に保険金目的でヒ素入りのお好み焼きを提供され、

ヒ素中毒に陥ったとされていたM氏については、

退院後、独自に契約していた保険金を約2000万円受け取っていた事実が明らかになっている。

そして一、二審では、こうした人物たちがI氏同様、

保険金詐欺の罪を捜査機関に一切追及されることなく、

眞須美被告人がカレー事件以前から「毒婦」だったとする

検察の主張に沿う証言をしているのだ。

眞須美被告人がカレー事件の犯人に違いないという心証を

世間の多くの人に固めさせた 保険金詐欺疑惑ストーリーの真相が どういうことか、

賢明な読者諸氏なら、もうおわかり頂けたはずである。

「いくら捜査や裁判に怪しい点が多くても、林眞須美が犯人じゃなければ、他に誰が…」

という疑念を拭いきれない人も多いだろう。

その点については、残念ながら現時点では何も述べることができないが、

機が熟せば、どこかで何らの形で報告したい。

(文責・片岡 健)

http://enzai.org/masumi_hayashi/takarajima2.html (現在なし) 




カレー事件 に関しては「冤罪」の疑いが濃い、と思はれ、

息子のTV証言でも、

林眞須美は 事件当日カラオケに行って上機嫌で歌っていた、とか。

オウム死刑囚 13名執行といい、スピン臭くて 如何かと思う。

手前は死刑反対論者 ではないが、執行は 慎重な上にも慎重に、

冤罪だったら 取り返しがつかぬ。


 

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